自己信託にあたらないのか?
(1)事例
・甲と乙が共有する不動産について、委託者を甲と乙、受託者を乙、受益者を甲と乙とする信託契約が結ばれたとして、「信託」を登記原因として、共有者全員持分全部移転及び信託の登記の申請がなされた。
・受託者が共有者の一人であるため、自己信託となり、公正証書等による契約が必要なのではないか疑義が出た。
(2)法務省の見解
・平成30年12月18日法務省民二第759号によれば、共有不動産の共有者の一人への信託は自己信託には直ちにあたらず、信託契約(信託法3条1号)によるものとして登記可能と回答した。
自己信託について
1 設定の方法
・自己信託を設定するには、以下の方法である必要がある
①公正証書その他の書面
・公正証書、公証人の認証を受けた書面、確定日付のある証書
②電磁的記録
2 自己信託の必要的記載事項(信託法施行規則3条)
①信託の目的
②信託をする財産を特定する事項
③氏名及び住所
④受益者の定め
⑤財産の管理または処分の方法
⑥条件または期限の設定(任意)
⑦信託終了事由
⑧その他の条項
3 詐害的自己信託
①信託財産に対する強制執行
・害することを知って自己信託がなされたときには、債権者は信託財産に対して、強制執行等が可能である(信託法第23条2項)
・自己信託以外の信託の場合、詐害的信託であっても、原則詐害行為取消訴訟の判決が必要(信託法第11条)な点が異なる
②公益目的による強制終了
・信託の目的が不法であり、公益を害するときには、利害関係人の裁判所への申立てを行い、認められれば、信託の終了となる