総論
1 事業協同組合とは
事業協同組合は、「中小企業協同組合法」(以下、「中企法」)の基づいて設立された、組合員である中小企業が協同して、研究・生産・販売・購買を行う他、共済や事業資金の融通を図り、組合員の経営合理化や取引条件の改善を図ることを目的とした法人格のある組合である。
「中小企業団体の組織に関する法律」(以下、「中団法」)を基本法とし、「中企法」に規律を委任している。
①中企法による分類(7つの組合がある)
ⅰ事業協同組合
ⅱ事業協同小組合
ⅲ火災共済協同組合
ⅳ信用協同組合
ⅴ協同組合連合会
ⅵ企業組合
ⅶ中小企業団体中央会
②許認可法人
大企業に対抗できない中小企業支援という政策的配慮から、税制や独占禁止法除外等の優遇を受ける一方、行政庁の監督に服する。
③税制優遇
法人税や事業税等の軽減税率のほか、配当の一部(利益分量配当)の損金算入や固定資産税の一部減免措置がある。
2 機関
①必須機関(中企法35条、36条、46条)
ⅰ総会
ⅱ理事(3人以上)
ⅲ理事会
ⅳ監事(1人以上)
*共済事業を行う事業組合で200億以上の負債がある場合、会計監査人の設置が必要
②任意設置機関
任意的機関はない。
理事会の決定により、参事、顧問、共済計理人、会計主任を置くことができるが(中企法58,43,44条)使用人の一種であり、委任関係のある役員ではない。
③任期
理事は2年以内の定款で定める日まで
監事は4年以内の定款で定める日まで
会計監査人は会社法の定めによる
④業務執行および代表
理事会の決定したところにより、理事が業務執行する
理事会によって選任された代表理事が代表する
3 構成員
地区内で、事業を行う小規模の事業または事業協同小組合のうち定款で定めたものが組合員となる。(中企法8条1項)
組合員は一口以上の出資が必要で(中企法10条1項)、その範囲で責任を負うが、総会における議決権は出資額にかかわらず一人一個である(中企法11条1項)。
利益分配については、出資額に応じた出資配当と、組合事業の利用量に応じた利用分量配当がある。(中企法59条2項)
4 定款
①記載事項
②定款変更
組合員の半数以上が出席し、その議決権の3分の2以上の多数によって行うが(中企法51条、53条)、定款変更には行政庁の認可がなければ効力は生じない。(中企法51条2項)
5 登記
登記事項は以下の通りである
①事業(目的等)
②名称
③地区
④事務所の所在場所
⑤出資一口の金額および払込方法ならびに総出資口数および払込済総額
⑥存続期間または解散時期・事由
⑦代表者の氏名住所および資格
⑧公告方法(店頭掲示および任意的公告方法)
登記手続
1 設立登記
①申請時期
第一回の出資の払込があった日から2週間以内に申請する(中企法84条1項)
②添付書類
ⅰ定款
ⅱ創立総会議事録、理事会議事録、理事の就任承諾書、理事長の就任承諾書
ⅲ出資引受書
ⅳ払込証明書
ⅴ認可書
ⅵ委任状
③登録免許税
非課税である
2 組織変更
事業協同組合の解散登記と、株式会社の設立登記を同時に行う。(中団法100条の14第1項)
①解散登記の添付書面
設立登記と同時に行うため添付書面は不要である
②設立登記の添付書面
ⅰ組織変更計画書
ⅱ定款
ⅲ組合の総会議事録
ⅳ役員の就任承諾書
ⅴ会計参与・会計監査人の資格証明書
ⅵ取締役会議事録等
ⅶ株主名簿管理人との契約書等
ⅷ公告をしたことを証する書面(組織変更公告)
ⅸ公告および催告をしたことを証する書面(債権者保護手続き)
ⅹ委任状
③登録免許税
解散登記は非課税
設立登記は資本金額の1000分の7(最低15万円)
3 その他の登記
すべて不課税である
(1)役員変更登記
(2)参事の選任
理事会によって選任され、参事の就任承諾書は不要である。(使用人であるから委任関係にはない)
(3)定款の変更
定款変更の行政庁による認可が必要
(4)事務所の移転
定款変更の行政庁による認可が必要
(5)出資一口の金額の減少
定款変更の行政庁による認可が必要
(6)解散・清算人就任
代表理事が代表清算人となり、代表清算人のみ登記する
(7)清算結了