登録免許税法第7条第2項
登録免許税法第7条第1項では、①委託者から受託者への所有権移転②委託者兼受益者である者への所有権移転③受託者の変更に伴う所有権移転には登録免許税が課されないとされている。
同第2項では、委託者兼受益者である者に相続があり、当該相続人に受託財産の所有権移転登記をする場合には相続があったものとして、登録免許税が課されるとされている
事例1
(1)事実関係
1.甲はその唯一の相続人である乙の経営するX社に、土地と建物の管理、運用、処分を目的とする信託契約を結んだ。
2.信託契約において委託者および受益者は甲である。
3.信託契約終了前に甲が死亡した場合には、委託者および受益者の地位は、乙および甲の妹である丙に移転する。
4.信託終了前に甲が死亡した後、乙または丙が死亡したときには、その一方に委託者および受益者の権利が移転する。
(2)事例
①ケース1
信託契約終了前に甲が死亡し、委託者兼受益者の地位を乙のみが取得(丙は既に死んでいる)した場合に信託契約終了後の所有権移転についての登録免許税法7条2項の適用
↓
登録免許税法7条2項が適用され、相続があったものとして取り扱う
②ケース2
信託契約終了前に甲が死亡し、委託者兼受益者の地位を乙および丙が取得した場合に信託契約終了後の所有権移転の登録免許税法7条2項の適用
↓
乙には登録免許税法7条2項を適用し、相続があったものとして取り扱うが、丙は相続人ではないため、7条2項は適用されず、所有権の移転として取り扱う。
③ケース3
信託契約終了前に甲が死亡し、委託者および受益者の地位を乙と丙が取得したが、信託契約終了前に丙が死亡し、乙が唯一の委託者兼受託者の地位を取得した場合に信託契約終了後の乙への所有権移転の登録免許税法7条2項
↓
乙には登録免許税法7条2項が適用され、相続があったものとし取り扱う
(委託の効力発生後、受益者への所有権移転まで、委託者と受益者が同一であると限定する7条1項2号のような規定はないから)
*信託契約の終了に伴い受益者が受ける所有権移転登記に係る第7条2項の適用関係について
事例2
(1)事実関係
1.甲は自分が認知症等になったときのために、実子乙と信託契約を結んだ
2.甲を委託者兼受益者とし、甲が死亡したときには信託契約は終了し、委託者たる地位および残余財産帰属権利者および清算受託者たる地位を乙とする
(2)事例
甲の死亡により、乙が委託者の地位および残余財産帰属権利者並びに清算受託者たる地位を取得した場合の登録免許税法7条2項の適用
↓
乙に登録免許税法7条2項が適用され、相続があったものとして取り扱う
(甲の死亡により信託契約が終了しても、清算が終了するまでは受益者たる地位は消滅せず、乙は委託者兼受益者たる地位を取得したと考えられるから)
*信託の終了に伴う、受託者兼残余財産権利帰属者が受ける所有権移転登記に係る第7条2項の適用について