電子記録債権とは
根抵当権の被担保債権の範囲に「電子記録債権」が認められました。
例えば被担保債権の範囲を「銀行取引、手形債権、小切手債権、電子記録債権」とする根抵当権を設定することができるわけです。
(1)電子記録債権とは
電子記録債権はこれまでの、手形や指名債権(売掛債権等)の問題点を克服し、特に中小企業等の資金調達の円滑化のために創設された金銭債権である。
電子記録債権の発生、譲渡等は電子債権記録機関に電子記録をすることがその効力発生要件となっている。
(2)これまでの問題点
①手形
・作成・交付・保管コスト
・紛失・盗難リスク
・分割不能
②売掛債権
・譲渡債権の不存在・二重譲渡のリスク
・債務者への譲渡通知のコスト
・人的抗弁を受けるリスク
(3)電子記録債権の利点
・電子データの送受信による発生・譲渡(低コスト)
・記録機関の記録原簿で管理(紛失・盗難リスクなし)
・分割可能
・電子記録により債権の存在・帰属を可視化
・債権の存在は可視化されており、債務者への通知は不要
・人的抗弁は原則として切断される
電子記録債権の取引の安全の保護
1.権利の推定
債権記録に債権者として記録されている者は債権者と推定される(9条)
2.記録機関の損害賠償責任
記録機関が不実の記録をしたり、無権代理人等の請求による記録をしたことにより損害が発生した場合、記録機関への損害賠償請求において、記録官の故意過失の立証責任が転換され、記録官側が故意過失の不存在を証明しなければならない(11条、14条)
3.意思表示の無効又は取り消しの特則
民法上は心裡留保、錯誤による無効の第三者や、詐欺・脅迫による取消の第三者は保護されないが、第三者が善意・無重過失であれば保護される特則がある(12条)
4.無権代理人の責任の特則
無権代理人が電子記録の請求をした場合、相手方に重過失がない限り、無権代理人の免責を認めず、民法よりも免責要件を厳格化している(13条)
5.善意取得及び人的抗弁の切断
電子記録債権の譲受人として記録された者が悪意または重過失でない限り、譲渡記録が無効であっても、譲受人が債権を取得する(善意取得)
譲受人に害意がない限り、債務者は人的抗弁をもって譲受人に対抗できない(人的抗弁の切断)
6.支払い免責
記録されている債権者に、債務者が悪意・重過失なく弁済した場合には、債権者が無権利者であっても、有効と認められる。