概要
1 概要
〈有価証券届出書〉とは、有価証券の募集、売出しに際して、内閣総理大臣に対して提出する法定開示書類である。
この有価証券届出書には、発行者の営業および経理の状況、その他の事業の内容に関して重要な情報および当該有価証券の発行条件などを記載している。
この内容は一般に公開されて、投資家の保護を図っている。
発行や売り出し価格の総額が1億円以上の場合や、勧誘の相手方が50人以上の場合など、一定の基準を満たす場合には、有価証券届出書の提出をしなければ、発行や売出しをすることはできず、違反した場合には罰則の対象となる。
2 有価証券届出書の記載事項
第一部 証券情報
1.募集要項
2.売出要項
3.第三者割当の場合の特記事項
4.その他の記載事項
第二部 企業情報
1.企業の概況
2.事業の状況
3.設備の状況
4.提出会社の状況
5.経理の状況
6.提出会社の株式事務の概要
7.提出会社の参考情報
第三部 提出会社の保証会社の情報
第四部 特別情報
1.最近の財務諸表
2.保証会社及び連動子会社の最近の財務諸表又は財務書類
3 有価証券届出書の様式
以下の7つの様式がある
①第2号様式
通常方式
②第2号の2様式
組込方式
③第2号の3様式
参照方式
④第2号の4様式
新規公開時に使う
⑤第2号の5様式
1億円以上5億円未満の募集または売出時に使う
➅第2号の6様式
組織再編成時に使う
⑦第2号の7様式
新規公開にかかる組織再編成時に使う
募集の告知と有価証券届出書
株式の発行時には、会社法201条3項により、払込期日の2週間前までに、株主に対して会社法199条1項の通知が必要である。
ただし、有価証券届出書が提出されたときには、会社法201条5項により、募集事項の通知は確保されており、会社法上の公告や通知が不要となる。
提出スケジュール
1.提出日の2週間前までに財務局と相談し、効力発生日及び提出内容の確認を行う
2.提出日当日に取締役会を開き、その議事録と有価証券届出書を同時に提出する
3.提出日の翌日から16日目に効力が発生
効力発生
事前に有価証券届出書を提出することで、募集や売出の勧誘をすることができるが、実際に有価証券を取得させたり、売りつけることは、有価証券届出書の効力が発生した後でないとすることができない。
効力発生は提出日の翌日から16日目に発生することから、割当や売り渡しはその後に行うことになる。
尚、組込方式や参照方式で有価証券届出書を提出した場合には、効力発生期間を短縮する申出をすることができる。
効力発生までに期間を設ける理由は、投資家の熟慮期間の設定である。
記載内容の審査
1.提出後効力発生まで、適切な開示上の確保のため財務局で審査する
2.効力発生後、証券取引等監視委員会が同様な審査をする
提出が不要の場合
1.発行価格の総額が1億円未満の場合
2.非開示会社の有価証券の売出で、総額が1億円未満の場合
3.開示会社の売出
4.適格機関投資家や特定投資家等に募集又は売出をする場合
5.自己株式のストックオプションを自社の役職員に付与する場合
6.その他
組織再編時の提出義務
会社の合併、分割、株式交換、株式移転により株主に新株が発行または交付される場合には、株式の募集、売出に類似するものとして、有価証券届出書の提出が求められている。
合併存続会社が非開示会社で、消滅会社が開示会社である場合など、株主に情報が開示されないこととなるのを防ぐのが目的である。
そのため、消滅会社が非開示会社であったり、存続会社が開示会社である場合には、組織再編時にも有価証券届出書の提出は不要となる。