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旧民法用語

1 太政官・太政官布告・家・氏等

1.太政官

明治新政府の最高官庁で現在の内閣に相当する

明治18年(1885年)内閣制度の発足により廃止

 

2.太政官布告・太政官達

太政官の交付した法令の形式

 

3.家

戸主1名とその他の家族からなる親族団体

家督相続により戸主が継承された

 

4.氏

「家」の名称であり、戸主及び家族は氏を称した

 

2 戸主・戸主権・女戸主

1.戸主

家族の唯一の長(家長)であり、戸主権を持つ

 

2.戸主権

戸主は家の統率者として、家族に対する一定の私法上の権限と義務があり、これを戸主権という

(1)戸主権

・入籍に対する同意権

・居所指定権

・婚姻・養子縁組の同意権

・去家に対する同意権

・入籍を拒む権利

・家族を家籍から離籍する権利

 

(2)戸主権以外の権利

・廃家する権利

・隠居する権利

・法定推定家督相続人排除権

・家督相続人指定権

・遺産相続権

 

(3)戸主となる原因

家督相続・分家・一家創立・廃絶家再興

 

(4)戸主権の喪失

家督相続・廃家・絶家により戸主の地位を失った時

 

3.女戸主(にょこしゅ)

女性の戸主のこと

 

3 隠居

戸主が生前相続人に戸主権を承継させ、家族となること

(1)普通隠居

要件1:満60歳以上

要件2:完全な能力を有する家督相続人の単純承認

 

(2)特別隠居

戸主が疾病、本家の相続又は再興等やむを得ない場合に、裁判所の許可を得て隠居できる

 

(3)女戸主の隠居

女戸主は年齢にかかわらず隠居できた

 

(4)法定隠居

戸主が隠居届を出さずに、他家に入る婚姻届または養子縁組届を出し、誤って受理された場合、隠居したものとみなした。

 

(5)届出

隠居者と家督相続人の連名による署名により届出が必要だった

 

4 財産留保

隠居による家督相続の場合、隠居者が生存しているため、隠居者に財産を留保することを認めた。

第三者に対抗するため、確定日付のある証書によって行う。

留保された財産はその後に取得された財産と共に、遺産相続の対象となり、家督相続の対象とはならない。

 

5 退隠・去家・廃嫡等

1.退隠

隠居のこと

 

2.去家

除籍のこと

親族関係の終了や、相続権の喪失など

 

3.廃嫡

法定推定家督相続人の資格を奪うこと

 

4.生来・生来の嫡出子

生まれながらの嫡出子であり準正嫡出子に対する用語

 

5.家女

その家に生まれて在籍する女性または養女として在籍する女性

 

6.脱籍

戸籍から抜けていること又は抜けること

 

6 分家と本家

分家とは家族が戸主権を脱して、同じ氏の一家を創立すること

家族は、戸主の同意を得て分家できる

分家は本家相続の時に大きな意味を持つ

 

分家時に本家から田畑などの財産を分割してもらうことがあり、登記上、分家時に所有権移転していることがある

 

7 携帯入籍・親族入籍・引取入籍・随従入籍

1.携帯入籍

家族が分家する時に、戸主の同意を得て、自分の直系親族を同時に分家家族とすること

この制度がない時には、分家したあと、自分の子供などを親族入籍させる必要があった

 

2.親族入籍

戸主の親族で他家にあるものが入籍すること

 

3.引取入籍

婚姻または養子により他家に入ったものが同時に親族を入籍させること

 

4.随従入籍

夫が他家に入りまたは一家を創立した時は妻もこれに従うこと

 

8 婚家と実家・養家と実家

1.婚家と実家

婚姻により妻または夫が入った家を婚家といい、従来在籍していた家を実家という。

婚家からさらに転婚した場合、新しい婚家を基準に、直前に在籍した家を実家という。

 

2.養家と実家

養子により入った家を養家、従来の家を実家という。

養家から転養した場合、新しい養家を基準に、その直前に在籍していた家を実家という

 

9 廃家

「廃家はその家を絶滅させる意思をもってする、戸主権の任意の放棄である」

家督相続により戸主となったものは、本家再興、本家相続その他正当な理由により裁判所の許可がある時にのみ廃家できた。

いっぽう一家創立時には自由に廃家できた。

後日その家が再興されたときには、再興者は廃家の時の戸主権を取得するのではなく、原始的に戸主権を取得する。

そのため廃家の時に不動産等の財産があった場合にも、再興者は家督相続しない。

 

 

廃家者の権利義務は廃家後も廃家者のものであるため、廃家者名義の不動産については家督相続か遺産相続かを判断する必要がある。

 

10 絶家

戸主を失い家督相続が始まったが、家督相続人の不在が確定し、その家が断絶することを言う。

家督相続人とならない家族は、一家創立をして、絶家届を出す。

 

(1)財産がある家の絶家

財産があるが、家督相続人がいない場合、「相続人の曠欠」の手続きを経て、絶家となり、財産は国庫に帰属する

 

(2)財産がないが家族のある絶家

家族が財産がないことを証明し、一家創立による絶家の届出をする

 

(3)財産も家族もいない絶家

戸主を失った時に絶家するが、裁判所の許可を得て、市町村が職権で絶家をする。

 

(4)絶家の無効

絶家の後で、財産が発見された時は、戸籍の訂正をし絶家を抹消した後で、「相続人の曠欠」の手続きをする。

 

(5)登記上の問題点

新法施行後に戸主名義の財産が発見された場合、先例上戸籍の訂正をしなくても相続登記ができる。

家督相続人の不在を理由に絶家していた場合、民法附則第25条第2項により、新法を適用して相続登記を行う。

 

11 廃絶家再興

廃家または絶家した家の氏と家系を承継して再興すること。

再興は家の名前を称することが認められるだけで、戸主の家督相続をするわけではないので、廃絶した戸主名義の不動産を相続することはない

 

戸主が廃家して他家の再興をした場合、家族は当然に再興した家に入る。

家族が再興した場合には、その配偶者も当然に再興した家に入るが、直系卑属等は当然には再興した家に入らず、親族入籍の手続きが必要である。

 

12 一家創立

戸主の意思によらず、法律上当然に一家が設立されることを言う。

 

①子の父母が共に知れない時(棄児など)

②非嫡出子が父母の家に入ることができない時

③婚姻・縁組により他家に入った者が、離婚・離縁したが実家が廃絶している場合

④絶家に家族がある時

 

*戸籍上の注意点

一家創立により新たな氏を称することができたため、氏が代わることがある

記載例「大正15年5月5日甲野義太郎死亡家督相続人なきにつき、横浜市加賀町一丁目8番地にて一家創立乙野氏を称する」

 

13 他家・他家相続・本家相続

1.他家・他家相続

ある家から、他の家は全て他家となる。

家族は戸主の同意があれば、他家を相続できる

 

2.本家相続

法定推定家督相続人は他家に入ったり、一家創立はできないのが原則である

ただし、本家は他家より重要という考えにより、本家を相続する必要がある場合に、法定推定家督相続人が分家をでて、本家に入ることが認められる。

 

14 婚姻・入夫婚姻・離婚

1.婚姻

家族の婚姻には戸主の同意が必要

 

2.入夫婚姻・入夫

女戸主と結婚し夫がその家に入ること

原則として入夫した夫が女戸主から家督相続により戸主となる

但し婚姻時に夫が戸主となる旨を届出なかった場合には、女戸主のままで夫は家族となる

 

3.離婚

夫婦が養子となり、または養子が養親の他の養子と婚姻している場合、妻が養親と縁を切り家から出る時は、夫は妻と離婚して家に残るか、親と縁を切り家を出るかを選択する必要があった。

離婚により、継親子および嫡母庶子の法定血族関係は消滅する。

 

15 実子・私生子・庶子・縁女・妾・附籍

1.実子

実子:嫡出子と非嫡出子

非嫡出子:庶子と私生子

 

2.私生子

婚姻関係にない男女の子で父の認知を受けていない子を言う

母の家に入るのが原則だが、母の家の戸主の同意がない場合、一家創立する

 

3.庶子

父が庶子の出生届を出した時は認知したものとみなされる

父が戸主の場合父の家に入り、父が家族でも戸主の同意があれば父の家に入る

 

4.縁女

戸主が幼女を将来結婚ささせることを目的に入籍させること

家女をもって養子の縁女とすることもあった

 

5.妾

妾は妻と共に二親等の親族とされ配偶者と同等の地位にあった

妾の子は妻の子と同様に公正子として扱われていた

 

明治15年旧刑法により、妻と同等の親族関係の制度を廃止したことにより、妾制度は廃止され、一夫一妻制度となった。

 

6.附籍

生活困窮により他人の家に厄介担っていたものを、附籍として記載していた(明治5年式戸籍)

明治31年旧民法施行により附籍はなくなり、一家創立や復籍などが行われた

 

16 継親子・養親子・養嗣子・嫡母庶子等

1.養親子

養親子とは養子縁組をした養親と養子のことを言う

 

2.婿養子縁組

養子縁組と同時に養親の娘と結婚する制度

 

3.養親が養家を去りたる時

養親が婚姻などで他家に入っていた時に、養子としていた者がいても、当該養親が離婚等により養家から出た場合には、養子との血族関係が終了するとされた。

 

4.継親子・家付きの継子

「継子とは配偶者の子であって、婚姻当時配偶者の家にありたるもの、又は婚姻中にその家に入りたるもの」

婚姻中に子供が生まれた後、妻が死に、再婚した場合、後妻にとって先妻の子を継子というのが典型例である

 

家付きの継子とは継子の中でも、その家生来の者をいう。

家付きの継子の中でも、法定推定家督相続人であったものが、他家から来た継父が戸主となっており、新民法の適用により継親子関係が消滅し、相続関係が生じないと不利益が生じるために、特別の措置が取られている

 

5.養嗣子・嗣子

養嗣子は、いわゆる「後継ぎのための養子」のことを言う。

推定家督相続人がいないか廃嫡した場合に養子を嗣子として家督相続人に指定すること

 

6.嫡母庶子

父が認知した非嫡出子を父との関係で庶子というが、父の妻が庶子の母でない場合の関係性を嫡母庶子関係という

 

17 除籍

戸籍から戸籍内の者を除くことを「除籍」、全員が除かれた戸籍も「除籍」と言う

 

全員が除かれた除籍ができる原因

①家督相続により全員が除籍され新たな戸主の戸籍に入る場合

②他の管轄地に全員が住所を移転する場合(転籍)

 

 

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