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民法附則の解説

民法附則(昭和22年12月22日法律第222号)解説

1 第4条(新法遡及の原則)

新法は、別段の規定のある場合を除いては、新法施行前に生じた事項にも、これを適用する。

但し、旧法及び応急措置法によって生じた効力を妨げない。

 

〈解説〉

原則的に、新民法は全体的に遡及主義を採用していることを示している。

但し書きは、既に生じた法律関係に混乱が生じないための措置となる。

 

2 第25条1項(相続に関する新法不遡及の原則)

応急措置法施行前に開始した相続に関しては、第2項の場合を除いて、なお、旧法を適用する。

 

〈解説〉

新民法の全体的な原則は第4条のとおり遡及主義であるが、相続に関しては、附則第25条1項において、旧民法当時(昭和22年5月2日まで)に開始した相続については、遡及主義の例外として旧民法の親族法、相続法を適用することとし、既に生じた法律関係を覆さず複雑化させないことを示している。

つまり、相続に関しては不遡及であることを示している。

 

3 第25条本文(相続の新法適用)

応急措置法施行前に、家督相続が開始し、新法施行後に旧法によれば家督相続人を選定しなければならない場合には、その相続に関しては、新法を適用する。

 

〈解説〉

相続に関しては、第1項で新法不遡及の原則を示した上で、その例外として新民法が適用される場面を規定している。

つまり、旧民法中に処理ができなかった場合には、新法を適用するものである。

 

その1

第1順位および第2順位の家督相続人がおらず、第3順位の第1種選定家督相続人を選定すべきときに、選定していなかった場合

その2

親族会が第2種選定家督相続人を選定すべきときに、選定していなかった場合

 

この2つの状況の中、昭和23年1月1日の新民法の施行日を迎えた場合には、新民法を適用して相続人を決定することになる

 

(1)第25条2項本文と相続権

民法附則25条2項本文により新法が適用されるべき相続に関しては、旧法の規定により直系卑属として相続権があった者も、新法によれば直系卑属とみとめられない場合、相続人になれない。

 

(2)第25条2項本文と数次相続

旧民法時代に開始した相続に新法を適用して相続人を決定した場合に、その相続人も旧民法中に死亡している場合があり、その場合には旧民法を適用して相続人を決定する。

(例)戸主Aには長男Ç、二男D、長女Eがいた。

二男Dは分家して戸主となり、長女Eは婚姻によりGの家族となった

戸主Aの死亡により長男Cが家督相続した

新戸主Cは昭和20年5月に死亡、二男Dは昭和20年9月に死亡した

Cに指定家督相続人はおらず、昭和23年1月1日現在、選定された家督相続人がいない

この場合、新民法が適用され、相続人は二男D(2分の1)、長女E(2分の1)となる

Dは旧民法中に死亡しているため、妻F、長男H,長女Iがいる場合にも、旧民法が適用され、長男たるHが家督相続する

 

4 第25条2項但し書き(財産分配請求権)

但し、その相続の開始が、入夫婚姻の取消、入夫の離婚または養子縁組の取消によるときは、その相続は、財産の相続に関しては開始しなかったものとみなし、第28条の規定を準用する。

 

〈解説〉

戸主となった入夫が婚姻の取消または離婚により家を去った時、および戸主となった養子が養子縁組の取消により開始する家督相続については、新民法施行までに家督相続人が選定されなかった場合には、相続は開始しなかったものとみなす。

しかし、これでは入夫や養子が戸主として取得した財産を自分のものとしてしまうため、残された家族やその卑属には不公平となるため、元妻や、元養親またはその相続人等は一定の財産分配請求権を認められた。

 

5 第26条1項(家附の継子の新法施行後の相続権)

応急措置法施行の際における戸主が婚姻または養子縁組によって他家から入ったものである場合には、その家の家附の継子は、新法施行後に開始する相続に関しては、嫡出である子と同一の権利義務を有する。

 

〈解説〉

旧民法728条において、継父母と継子は直系血族一親等の関係であったが、応急措置法施行後は姻族一親等の関係となり、継父母が死亡しても継子には相続権はないことになった。

しかし、継親が他家から入ってきた者で戸主となった場合、元々その家に生まれついた者(家附の継子)は姻族一親等だからといって、その戸主の死亡後、その家の財産を一切相続できないのは理不尽である。

なぜなら、元々戸主の財産は、入家の前戸主から引き継いだものが大半だからである。

そこで新民法施行後に開始する相続に関しては、継子に相続権を与えることにした。

(1)第26条1項の適用の要件

①新民法施行後に開始した相続であること。応急措置法施行中の相続には適用されない。

②被相続人が昭和22年5月3日(応急措置法施行時)に戸主であること

③戸主は、婚姻、入夫婚姻、養子縁組または婿養子縁組によって他家から入ってきた者であること

④家附の継子の要件に該当すること

 

(2)家附の継子の要件

被相続人にとって、その家で出生していた配偶者の嫡出子または庶子であること

 

(3)家附の継子に該当する事例

①配偶者の家附の子が、戸主が入籍して継親子関係が発生した後に、婚姻により他家にある場合でも継親子関係は消滅しない。

②配偶者の家附の子が、戸主の入籍時には存在していなくても、旧民法施行中に婚姻、縁組の解消によって復籍または入籍したことにより継親子関係が生じ、応急措置法の施行を迎えた場合

 

(4)家附の継子に該当しない場合

①戸主の入籍前に、配偶者の家附の子が、婚姻、養子縁組、分家などで他家におり、そのまま応急措置法の施行を迎えた場合。

②女戸主の私生子は、入夫戸主の家附の継子ではない

③前夫たる入夫または婿養子の連れ子のように、他家で生まれて他家から入籍した者は、継子であっても家附の継子ではない。

 

(5)家附の継子であっても、第26条1項に該当しない場合

①被相続人が戸主ではなく、家族の場合

②新民法施行中(昭和23年1月1日)より前に生じた相続である場合。応急措置法施行中の相続には同条2項で手当される。

③戸主の入籍が、婚姻、入夫婚姻、養子縁組ではない場合

 

 

 

6 第26条2項(家附の継子の応急措置法施行中の相続による相続財産分配請求権)

前項の戸主であったもの応急措置法施行後新法施行前に相続が開始した場合には、前項の継子は、相続人に対して相続財産の一部の分配を請求できる

 

〈解説〉

附則第26条1項は、家附の継子の権利を保護するためであるが、本附則が制定される前の、応急措置法施行中に開始した相続は、その法律に従って、家附の継子を除外して既に相続が処理されていることもあり遡及させることができない。

そこで相続は有効とした上で、家附の継子に財産分配請求権を与えることで保護した。

 

7 第26条3項(家附の継子の財産分配請求権の不適用)

前2項の規定は、第1項の戸主であった者が応急措置法施行後に婚姻の取消もしくは離婚または縁組の取消また離縁によって氏を改めた場合には、これを適用しない

 

〈解説〉

応急措置法施行中の戸主が、離婚もしくは婚姻の取消または養子縁組の取消もしくは離縁によって氏を改めた場合には、附則28条により、配偶者または養親等に財産分配請求権が認められている。

従って、家附の継子にまで、1項、2項の相続権や分配請求権を認める必要がないとした。

 

8 第28条(戸主であった者の離婚等による復氏の場合の財産分配請求権)

応急措置法施行の際に戸主であった者が、応急措置法後に、婚姻の取消もしくは離婚または離縁もしくは養子縁組の取消により氏を改めた場合には、配偶者または養親、もしくはその新法による相続人は、その者に、財産の分配を請求することができる。

 

〈解説〉

応急措置法施行後は、離婚もしくは婚姻の取消または離縁もしくは縁組の取消しによって氏を改めた場合でも、家督相続は掃除ないため、戸主であったものが財産を持ち出すことになる。

従って妻や養親出会ったもの、またはその相続人が財産分配請求することができる権利を認めた。

家附の継子は、「新法によるその相続人」として、本条の財産分配請求権により権利を主張する。

 

 

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