法務省民事課長の回答(平成29年3月23日)
1.事例
建物の区分所有等に関する法律(昭和37年法律第69号。以下「法」)の適用のある建物の敷地について、東京都から文筆の登記の嘱託がなされた。
この建物は専有部分が60室ある敷地権付き区分所有建物であり、各専有部分の区分所有者は1名である。
また敷地は区分所有者60名全員の共有であった。
当該分筆登記の嘱託は、分離処分可能規約を設定した上で、敷地の一部(建物が所在しない部分)について東京都と売買契約を締結した59名を被代位者として、代位によってなされたものである。
法第21条が準用する法第17条の規定によれば、建物の敷地の変更は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議で決するとされており、当該分筆の登記の前提となる区画決定行為は、建物の敷地の変更に当たるものと解されるところ、当該分筆の登記の嘱託においては、被代位者及び当該被代位者の有する議決権の割合も4分の3以上である他、代位原因を証する情報として、売買契約書並びに当該区画決定行為及び分離処分可能規約設定に係る決議が記載された管理組合臨時総会議事録(当該議事録には地積測量図が添付され、敷地のどの部分について区画決定をし、分離処分を可能としたのかが明らかにされている。)が添付されており、当該決議がされていることも明らかであることから、当該分筆登記の嘱託を受理してよいのかどうか。
共有者の一部の者に代位してする共有土地の分筆の登記の申請を受理すべきではないとする昭和37年3月13日付民事三発第214号民事局第三課長電報回答があることから疑義が生じる。
また、当該分筆の登記に伴い、上記59名を被代位者として代位により区分建物の表題部(敷地権の目的である土地の表示欄及び敷地権の表示)の変更登記の嘱託もなされているところ、被代位者とされていない1名が所有する区分建物については、昭和58年11月10日付法務省民三第6400号民事局長通達記第七の二により登記官が当該変更登記をしてもよいのではないか。
2.回答(平成29年3月23日法務省民二第170号)
分筆の登記も、表題部の変更登記も申請を受理して問題ない。
区分所有法等の条文
〈建物の区分所有等に関する法律〉
第21条
建物の敷地又は共用部分以外の附属施設(これらに関する権利を含む。)が区分所有者の共有に属する場合には、第17条から第19条までの規定は、その敷地又は附属施設に準用する。
第17条
共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く)は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議で決する。
ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。
2 前項の場合において、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。